第168話「触らぬ神に祟りなし」


「平林綾香も、このグループと関りがあった」



重要なこと。そう言われてから、岩船先生が言い放った言葉だった。



「え・・・」



あまりに衝撃的な事実に、言葉が出なかった。


平林綾香。今から1年ぐらい前に自殺したこの高校の卒業生。


俺との関りは、天文部に彼女が遊びに来ていたところであった。


俺にできた、ほぼ初めての友達・・・。



「まぁ平林がそのグルの一員だったわけではない。簡単に言えば、そこの男たちにマークされていた・・・って感じかな」


「な、なにか反感を買うことでもしたんですか?」


「そうじゃないと思うぞ。ただ、気に入られていた。んで、グルの招待を受けた。ここまでは本人から聞いた内容だ」


「招待されて・・・」


「断ったそうだ」



めちゃめちゃ反感買うようなことしてるじゃないですか・・・。



「ヤンキーなんて頭悪くて倫理観もない。平林がどんな仕打ちにあったのかは、まぁ想像できるだろう」



頭が悪くて倫理観もない・・・。


色んなシチュエーションが浮かぶが、詳しく詮索することはしないでおこう。


というか、岩船先生がそこら辺を詳しく知っているとは思えない。



「村上、きみがやろうとしていることは、善人のやることだ」


「えっと、つまり」


「これは教師の立場ではなく、岩船佳奈美としての立場からの言葉だ。首を突っ込むのはやめておけ」



その一言は、確かに教師の立場から出る言葉ではなかった。


もうすっかり下校時間を過ぎている時間帯。静まり返った学校で、この世の中の理不尽さを突き付けられた気がした。


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