第169話「他言無用なのに色んな人に話してしまう」


平林綾香と関りがあった。


その言葉が、いつまでも脳裏でリピートされる。


そして、三永瀬蒼に関しても。



「はぁ」


「ため息すると、幸せが逃げるって言うよな」



隣でそんな風に言うのは、暁匠馬だ。


今は部室。部活動の時間だ。



「何かあったん?」



匠馬が問いかける。



「三永瀬蒼の件」


「あぁ。あいつね」


「三永瀬さん、好きであのグループにいるんじゃないって言ってたんだ」


「ほう?」


「だから、どうにかしてあげたいって気持ちがあって」



そんなことを匠馬に話す。


こいつはいわゆる陽キャと呼ばれる人種。


だけど、意外と人の話を親身になって聞いてくれたり、その話題を外部に漏らしたりはしない堅実な人。


そんな彼が、少し頭を悩ます。


その末に、出した答えが。



「やめとけ」


「え?」


「首を突っ込むのは、やめとけってことだ」



それは岩船先生にも言われたことだ。


匠馬も全く同じことを言う。



「ちなみにだけど、どうしてやめた方がいいんだ?」


「そりゃ、あのグルに首突っ込んだらロクなことがないからだ」


「ロクなことないって」


「いいか? ヤンキーグルとか言ってるけど、あれは社会なんだ」


「シャカイ」


「内部ではしっかりと組織としてのカーストとか慣習とかが固まっている。ヤンキーというよりかはヤクザに近いかもしれない。部外者が変に首突っ込んでいいようなちゃっちいグルとはワケが違うんだ」



そんな厄介な組織なのか・・・。


今まで知らなかったことが、逆に奇跡なんじゃないかって感じ。


でも、せめて平林綾香との関係は知っておきたい。


彼女の自殺と関係があるのか。それとも・・・。


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