第166話「他人の力は無力も同然」


「三永瀬さん、俺にできることはありますか?」


「あると思うか?」


「なにかあると思うんです。三永瀬さん、このままだと取り返しのつかないことになりますよ」


「お前にできることはない。せいぜい、他人に口外(こうがい)しないことだな」



そう言われて、なんか悔しかった。


俺には何もできないんだなぁって、そうはっきり言われたような気がした。


これが、俺じゃなかったらどうだったのだろうか。


例えば、暁拓馬だったら。岩船先生だったら。


もっと違った結果になっていたかもしれない。


もっと彼女の力になれていたのかもしれない。



「はぁ・・・」



蒼が、ため息をする。


彼女からしてみれば、俺に裏の顔がバレてしまうのは想定していなかったのだろう。



「村上」


「は、はい」


「お前、意外と良い奴なんだな」



そんな捨て台詞を吐かれ、彼女は退室していった。


えっと、褒められたのか?


よく分らないひと言。


褒めてやるから、首を突っ込むなってことなのか?



「あら、いま三永瀬さんとすれ違ったけれど・・・」



入れ違いで、夕凪先生が入室してくる。



「えっと、彼女は帰ったと思います」


「あら、久しぶりに来てくれたと思ったのに」


「そ、そうですね」


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