第162話「今までと大きく変わる印象」


10月に入った。


気温も下がり、制服も冬服へと衣替え。


そんなある日、いつも通り俺と匠馬が部室にいると。



「・・・久しぶり」



そっとドアを開けたかと思えば、小声でそう言う。


小柄で大人しそうな印象。


三永瀬蒼。およそ2か月ぶりの部室に登場である。



「え、あ、うん。久しぶり」


「ごめんなさい、休んじゃってて」


「あ、うん。大丈夫」



俺と蒼の、そんなぎこちない会話。


それをスマホをいじりながら聞くだけの匠馬。


なんというか、地獄だ。



「ごめん、俺帰る」



スマホをポケットにしまったかと思えば、リュックを背負ってそう言う匠馬。


この空間から逃げようというのか・・・。


しかし、、、。



「わかった。じゃあね」


「おう」



帰る匠馬を引き留めることはできなかった。


部室に取り残された俺と蒼。


どうすればいいのだろうか。


彼女は空いてる座席に腰を掛け、部室にある天文学に関する本を読んでいる。


彼女には色々訊きたいことがある。


訊きたいことはあるが、声を出せずにいる。


それはなぜか。


無論、怖いからだ。


夏休みに見た彼女の姿が、本当の三永瀬蒼。


そう思うと、彼女に話しかけることすら怖いと感じてしまう。


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