第160話「俺には関係のないこと」


去年の夏休みは、何だかんだで部活動はなかった。


その事実が活動記録に残っていたので、今年の夏休みも部活動はなかった。


匠馬もあの日以来俺の家に来ることはなく、連絡をしてくることもない。


三永瀬蒼も夏休み最初にカラオケに行ったのを最後に、連絡はない。


岩船先生とたまーに連絡をするぐらいで、あとは一人で引きこもって過ごした。


何となくの脱力感が取り切れないまま、二学期がスタートする。



「おひさ」



匠馬にそう言われる。


それと同時に、部室に入ってくるのは夕凪先生。



「お久しぶりですね。暁くん」


「おっ、夕凪先生。お久しぶりです」



通常授業がスタートすると、それと同時に部活もスタートする。


授業が終わると真っ先に部室へ向かった俺の次に、匠馬が入室。


それからまもなく、顧問の夕凪先生が入室。


天文部にはあと、三永瀬蒼という部員がいる。



「三永瀬さんは、誰か聞いてるかしら」



夕凪先生が、二人しかいない部員に問いかける。


俺は少なくとも何も聞いていない。


そして、匠馬も首をかしげる。



「そっか」



呆れた顔というよりかは、深刻そうな顔をする夕凪先生。



「ちょっと待っててね」



そう言い、彼女は部室を出て行った。



「なぁ匠馬」


「どうした友彦」



夕凪先生が完全に退室したところで、匠馬に話しかける。



「夏休み中のあれ、、、関係してるのかな」


「知らん。中学の頃からああだったらしいし、関係ないんじゃない?」



三永瀬蒼に関して、匠馬がどこまでを知っていて、岩船先生がどこまでを知っているのだろうか。


そして、彼女は一体何者なのだろうか。


謎は深まるばかり。


でも正直、今日この場に三永瀬蒼がいなくてホッとしてる俺もいる。


これから彼女と、どんな顔して会えばいいのだろうか。



「匠馬」


「なんだよ、いちいち名前を呼んで気持ち悪い」


「三永瀬さん。どうすればいいと思う?」


「好きにすれば? 俺には関係のないことだし」



関係のないこと・・・。


確かに、そうなのかもしれない。


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