第158話「町外れの廃墟」


気温も湿度も高い、よく晴れた日。


匠馬になぜか家バレして、アポなしで凸された。


そして、半ば強引に外出することに・・・。



「どこ行くんだよ」


「黙ってついて来いよ」



そう言われてもなぁ。


そんな風に思いながらも、彼についていく以外に選択肢はない。


しばらく歩いて到着したのは、人気のない廃墟。


廃墟となった建物を見る限り、元々は工場だったのだろうか。


外周はフェンスで囲まれているが、一か所だけ壊れているところがあった。


壊れているというよりかは、壊しているの方が適切かもしれない。



「え、ここ入るの?」


「そうだな。あと、ここからは喋るなよ」


「どうして」


「とにかく黙ってろ。あと、なるべく足音も立てるな」



どうしてそんなことをしなくちゃいけないのだろうか。


廃墟に入ることは普通に不法侵入だし、そうじゃなくても普通に帰りたい。


でもいまさら断ることもできないので、ここは黙って匠馬の言う通りにするしかない。


匠馬は慣れた足取りで廃墟の敷地内に侵入する。


そこから外を歩き、入口らしきところから建物内に侵入。廊下をしばらく歩いていると・・・。



「どうするの? あんた」


「知らないわよ。でも、ちょろそうなカモは見つけたわよ」



女性の声が響いてくる。


息を殺し、廊下を進む。


そして、廊下は吹き抜けたところで終わっていた。


俺らがいるのは、吹き抜けの2階部分。


匠馬が指をさした。


方向は、下の階。


そっと覗き込む。



「・・・っ!?」



吹き抜けの一番下。


俺と匠馬のいる階の一つ下。


そこには、女子複数人がグループを形成していた。


少し離れたところには、男子の姿も・・・。


どいつもこいつもガラの悪い人たち。


その中には、身に覚えのある人まで・・・。


いや、ある意味それは、俺の知っている人ではなかった。


雰囲気も、言葉遣いも、何なら声質も。


何もかもが違う、三永瀬蒼が・・・。


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