第154話「悩みと相談事」


「岩船先生、寝ないんですか?」


「あぁ。起きてることにする」



俺が変な夢を見てしまい、飛び起きたのが3時半。


その物音で隣で寝ていた岩船先生を起こしてしまったのだが、彼女は二度寝せずに起きているらしい。



「起きてるんでしたら、ちょっとお話聞いてくれませんか?」


「相談事か?」


「逆です」


「はい?」


「岩船先生。最近なにか悩み事があるように思えます」



それを聞いた岩船先生は、一瞬だけ目を逸らすような表情をする。


そして次に、クスクスと笑い出した。



「お前、面白い奴だな」


「え、えぇ・・・」


「教師が生徒にそんなことを言われるようじゃなぁ」



まぁそれはもっともなのかもしれない。



「いやまぁ・・・なんか調子乗った感じですみません」


「でも、そうやって気遣ってくれるだけでもありがたいよ」



そう言った岩船先生は、こちらに笑みを浮かべてくれた。


普段はそこまで笑うことのない岩船先生。


でもこの時は、はっきりと表情が顔に出ていた。



「あ、はい・・・」


「確かに最近は、色々あって迷惑かけてるからな」


「迷惑ではないです。むしろ、迷惑かけてほしいです」


「あはは、どういう意味なんだそれは」


「ま、まぁ・・・。なんというか、先生にならどこまでも付いて行けるような気がして」



人付き合いは苦手だ。


でも、岩船先生との人付き合いは嫌とは思わない。


なにか特殊な魔力でも持っているのだろうか。


なんというか、不思議な感覚だ。



「なるほどな。でも村上は、これから自分の人生ビジョンについて考えなきゃいけない。他人のことに構っている暇はないからな」


「人生ビジョンですか」



ニートしてる未来しか見えない。


正直、ここまで高校にちゃんと通えてるのが奇跡としか言いようがないと思っている。


進学とか就職とか・・・なんかかったるい。


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