第153話「未明の目覚め」


「はっ!?」



目が覚めた。息が荒かった。



「どうした・・・村上」



呼吸を整えてると、隣から声が聞こえてくる。


視界は薄暗い。まだ日の出の時間ではないのだろう。



「あ、えっと・・・先生?」


「・・・どうした?」



隣から聞こえる声は、間違いなく岩船先生。


そっと目線を隣に移すと、そこにいるのはやっぱり岩船先生。


薄暗くても、その姿ははっきりと岩船先生だ。

彼女はいま、布団で横になっている。


察するに、起こしてしまったのだろう。



「あ・・・夢か」


「どうしたんだ? 怖い夢でも見たのか?」


「あ、えっと・・・その・・・」


「ん?」


「まぁ・・・そんなところです。ってか、いま何時ですか?」



岩船先生が布団から手を伸ばして、スマホを手にする。


画面をつけて、時刻を確認する。



「3時半だ」


「変な時間に起こしてすみません」


「別に大丈夫だ。そんな日もある」



岩船先生が、自殺した・・・?


そんな夢を見てしまった。


いつもは起きるとすぐに忘れてしまう夢の内容。


でもなぜかこの夢だけは、しっかりと脳裏に焼き付いていた。



「村上を責めるわけではないが、変な時間に起きてしまったな」



そう言い、岩船先生は身体を起こす。



「ほんとすみません」


「君が謝ることではない。むしろ私にとっては好都合だ」


「そうなんですか?」


「あぁ。私は朝の雰囲気が好きだからな。枕草子でも言ってただろ?」


「あれは冬のことじゃないんですか?」


「どっちでも同じようなもんだろ」


「えぇ・・・」



今は夏。さすがに同じものではない気がする。


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