第148話「久しぶりの天体観測」


岩船先生が用意した、天体望遠鏡。それに、なんかすごそうな装置が取り付けられたそれ。


電子観測ができる天体望遠鏡らしい。



「これっていわゆる、電波観測ってやつですか?」



天体観測には、主に二つの観測方法があると以前に学んだ。


それは、肉眼と電波。


どちらも文字通りだが、今までは肉眼での観測だった。


しかし、今日はいかつい装置を取り付け、パソコンにまで接続している。


もしかして、これが電波観測なのか・・・。


と、そんなことを思ったのだが。



「いや、普通に電波ではないぞ」



違うらしいです。



「違うんですね」


「電波は面白くない」


「あ、そうなんですか」


「電波は気象状況や時間に左右されずに観測できるが、目で見えるものではない」


「そりゃ、電波ですからね」


「面白いと思うか? キーンって音が鳴ったら、それが流星が通った証・・・なんて」


「ま、まぁ・・・」


「星ってのは、目で見るからこそ感動するものなんだ。ほら、上を見てみろ」



そう言われて、ちょっとだけ目線を上にあげる。


ここいらは、街の明かりや街頭もない田舎の小高い山の上。


首を動かすまでもなく、そこには数多の星々が視界に映り込む。


普段暮らしている街も、田舎の小さな都市ではあるが、さすがに星空が見れる環境ではない。



「綺麗ですね」


「そうだろ? こんな環境下で育ったからこそ、私は星を好きになれたんだと思う」


「毎日観てて、飽きてこなかったんですか?」


「飽きなかった。今もそうだ。不思議なことに」


「本当に好きなんですね」



それから、天体観測を行った。


岩船先生が用意した電子観測の天体望遠鏡は、星をパソコンに映し出す。


肉眼で観るのと、ぱっと見は同じだ。


しかし、より鮮明に映し出される。



「すごいな。村上」


「そうですね」



その日の岩船先生は、天体観測が終わるその時まで、テンションがずっと高かった。


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