第144話「それは、三永瀬蒼の中学生の頃の話」


高校に入学する前は、中学生というのが普通だ。


それは、三永瀬蒼も同じ。


彼女は地元の中学に通っていた。


そこは俺が卒業した中学校だ。



「んで、三永瀬はその学校じゃ有名な人間だったらしくてな」



と、そう言うのは岩船先生。


彼女はこの学校の教師ではあるが、蒼との接点はほとんどない。


そんな彼女でも認知しているレベル。蒼の存在感はそれほどのものだったのだろう。



「有名?」


「村上なら分かるんじゃないか? あの学校に、荒れてる奴がいるってこと」



うーん・・・。


そう言われても、俺の中学生時代なんて黒歴史も同然だ。


休み時間は机に伏せて寝たふりか読書。授業が終われば即帰宅。登校もギリギリだったし、誰かと話すようなことがあっても、業務連絡的なことだけだ。


それでいて他人に興味のない無頓着な人間。


周りの人間の様子なんて、詳しく把握しているはずがない。



「どうでしょうか」


「知らんのか」


「いやまぁ、騒がしい奴がいた記憶はあります」


「それが今回のグループなのかは知らんが、いわゆるヤンキー集団というか、まぁ荒れてる奴らがいて、そこに三永瀬もいたんだ」


「あ、三永瀬さんパシリ的なやつっすかね」


「いや逆だ」


「ギャクナンデスカ」



逆ということは、蒼がヤンキーだった・・・ということ?


てっきり、ヤンキーたちに言い寄られてパシリとして働かされていたと思ったのだが・・・どうやらそうではないようだ。



「この高校に入学するにあたって、中学校の方から直々に連絡があってな。それも指名だったよ」



三永瀬蒼はヤバい奴・・・。そういう風な連絡があったそうな。



「三永瀬さんがそんな風には見えませんけどね・・・」



俺がみる三永瀬蒼は、天文部の活動中だけだ。


あ、それとこの前カラオケに行ったけど・・・。


とはいえ、クラスではどんな感じなのか、プライベートではどんな感じなのか。


それは知らない。


もしかしたら、噂の通りで彼女には裏の顔があるのかもしれない・・・。


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