第143話「田舎の涼しげな通り風」


のどかな田舎の風景は、観ているだけでどこか癒される力を持っている・・・気がする。


客間の窓から見える光景は、家の前の小さな小道と、その先に広がる田畑。そしてそのまた先にある小高い山。


俺が住んでいる街もそこそこの田舎だとは思うが、ここまでではない。



「物思いにふけているのか?」



襖(ふすま)を開け、部屋に入ってきた岩船先生がそう言う。


はたから見ればそう見えるのかもしれない。


しかし、ただボーっとしていただけだ。


小高い山から吹く涼しげな風が気持ちよくて、ついボーっとしてしまう。



「別に・・・」


「そうか。まぁ好きにしてると良い。うるさいのがあと数分で来るらしいからな」


「うるさいのですか」



うるさいの。その言葉だけで、誰が来るのか見当がついてしまう。



「そういや、三永瀬蒼を誘うとか言ってなかったっか?」


「そういえば・・・忘れてました」



旅行に行くと岩船先生から聞いたときの話だ。


とはいえ、行先が岩船先生の実家なら、誘わなくて正解だったのかもしれない。



「まぁなんでもいいが」


「そういや岩船先生、やけに三永瀬さんのこと気にしてた時期ありましたよね」


「あぁ・・・まぁ」


「結局、梅雨が明けたら学校来るようになりましたよね」



岩船先生が蒼のことを気にしていたのは、梅雨の時期。


ちょうどその時期、彼女は体調不良を理由に学校を休みがちになっていた。


部活にも出席しておらず、夕凪先生もかなり心配していたのを覚えている。



「そうだな・・・まぁ」


「・・・? なにか、まだ気になることでもあるんですか?」


「・・・まぁ、担任でもない私が気にすることではないと思うのだが・・・」



俺はてっきり、天文部の部員である蒼が学校を休みがちになっているから心配して気にかけていた・・・そう思っていたのだが。


岩船先生の反応を見る限り、何かまだ心配事がある感じ・・・?



「なんかあるんですか?」


「うーん。まぁ話してもいいのかな?」



ちょっと悩んだ末に、岩船先生はゆっくりと語りだす。


それは、三永瀬蒼の中学生の頃の話。


田舎の涼しげな通り風


のどかな田舎の風景は、観ているだけでどこか癒される力を持っている・・・気がする。


客間の窓から見える光景は、家の前の小さな小道と、その先に広がる田畑。そしてそのまた先にある小高い山。


俺が住んでいる街もそこそこの田舎だとは思うが、ここまでではない。



「物思いにふけているのか?」



襖(ふすま)を開け、部屋に入ってきた岩船先生がそう言う。


はたから見ればそう見えるのかもしれない。


しかし、ただボーっとしていただけだ。


小高い山から吹く涼しげな風が気持ちよくて、ついボーっとしてしまう。



「別に・・・」


「そうか。まぁ好きにしてると良い。うるさいのがあと数分で来るらしいからな」


「うるさいのですか」



うるさいの。その言葉だけで、誰が来るのか見当がついてしまう。



「そういや、三永瀬蒼を誘うとか言ってなかったっか?」


「そういえば・・・忘れてました」



旅行に行くと岩船先生から聞いたときの話だ。


とはいえ、行先が岩船先生の実家なら、誘わなくて正解だったのかもしれない。



「まぁなんでもいいが」


「そういや岩船先生、やけに三永瀬さんのこと気にしてた時期ありましたよね」


「あぁ・・・まぁ」


「結局、梅雨が明けたら学校来るようになりましたよね」



岩船先生が蒼のことを気にしていたのは、梅雨の時期。


ちょうどその時期、彼女は体調不良を理由に学校を休みがちになっていた。


部活にも出席しておらず、夕凪先生もかなり心配していたのを覚えている。



「そうだな・・・まぁ」


「・・・? なにか、まだ気になることでもあるんですか?」


「・・・まぁ、担任でもない私が気にすることではないと思うのだが・・・」



俺はてっきり、天文部の部員である蒼が学校を休みがちになっているから心配して気にかけていた・・・そう思っていたのだが。


岩船先生の反応を見る限り、何かまだ心配事がある感じ・・・?



「なんかあるんですか?」


「うーん。まぁ話してもいいのかな?」



ちょっと悩んだ末に、岩船先生はゆっくりと語りだす。


それは、三永瀬蒼の中学生の頃の話。


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