第142話「結論は金欠」


古い木造の民家に到着した。


広い庭のような空間。二階建ての広々とした家。


いかにも田舎のおばあちゃんの家って感じ。



「さぁ、入れ」



岩船先生に案内され、民家に入る。


そのまま廊下を歩き、階段を上がり、二階の奥側にある角部屋へ案内される。


そこは、和風な民家という外装からしたら、少し意外なフローリングの部屋。


とはいえダークオークのような板材で、暗さと上品さがある部屋だ。


広さは見た感じで6畳前後だろうか。



「あぁ、前もここでしたね」


「ここしかないからな。文句あるのか?」


「あ、いえ・・・。なんか懐かしいなぁって思っただけです」


「まぁ1年ぶりだもんな」



家具などはほとんど置いていない和室の部屋。


小さな机に座布団がある程度の6畳部屋は、それ以上に大きく見える。


不思議な感じだな。俺の部屋も6畳ぐらいだが、その倍は広く感じる。



「えっと、春子さんでしたっけ。お元気そうで何よりです」


「それは本人の前で言うものじゃないのか?」


「あ、まぁ・・・そうですね」



ちなみに春子さんというのは、岩船先生の祖母にあたる人物で、中寿ほどのおばあさん。


しかし、現役で農業をする元気な方だ。



「手土産とか、持ってきた方が良かったですよね」


「私が事前にここに行くなんて言ってなかったんだ。そんなこと気にする必要はない」


「そ、そうですか・・・」



岩船先生からしてみれば、ここは実家だ。


お客なのは逆に俺のほうであり、そんな人に対して土産ぐらい持って来いよ・・・とは言えないよな。


まぁそんなことを言いつつも、小遣いがピンチでお土産買う余裕なんてないんですけどね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る