第141話「ちょうど1年前と同じ」


日差しが刺さるようで、呼吸するのにも体力がいるほどの真夏日。


駅前で、それなりに大きな荷物を待ってとある人物を待つ。



「待たせたな」


「あ、おはようございます。今来たところです」



これも社交辞令のようなものだよな。


今来たところかと言われれば、もう10分ぐらい待っている。


まぁ細かいことは気にしない。


いま目の前にいる人は、大雑把なところがあるからだ。


んで、いま目の前にいる人というのが・・・。



「岩船先生・・・なんか久しぶりですね」


「一週間ぶりだろ」


「ま、まぁそうなんですけど」



俺の通っている高校の理科教師であり、元天文部の顧問の岩船先生。


岩船先生とは、やけに距離が近い関係になっている。


これが良いのか悪いのかはさておき、今日は先生に言われてここに来ている。


俺は旅行だと思っているので、それなりの準備はしてきた。



「それで、どこ行くんですか? 旅行ですよね?」


「まぁ旅行だな。あと、これ切符な」


「う、高いですね・・・」



高いというのは、値段的な高さ。


渡された切符に印刷されている値段は、数千円とはいえそれなりに高め。


というか、券面に書かれた行き先の駅名。


なんか見覚えがあるのだが・・・。



「あれ、これって」


「どうした?」


「岩船先生の実家行くんですか?」


「言ってなかったっけ?」


「聞いてないですね」


「まぁうちの親戚たちが君に会いたがってるからな」



親戚たちって言われても、岩船先生の親戚で顔見知りなの二人しかいませんけどね。



「友奈さんですか?」


「まぁ黙ってついてこい」



それから電車に乗り込む。乗り換えもして、新幹線に乗り込む。


新幹線なんて、乗るのはいつぶりだろうか。


そう思ったが、ちょうど1年前に乗った覚えがある。


そう、今日の目的地へ向かうために・・・。


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