第140話「ポロリと出る本音」


三永瀬蒼とのカラオケは、意外と楽しかった。


まぁ俺はほとんど歌っていなかったから、カラオケを真に楽しんだとは言えないかもしれないが・・・。


まぁ細かいことは気にしないでおこう。


というか、俺にとっては歌う方が精神的な苦痛が大きい。



「今日はありがとうございます。楽しかったです」



帰り道に、そんなことを改まって言われた。



「あ、いや・・・俺が一緒で良かったのかなぁって思ったぐらい・・・楽しかったのなら良かった」



社交辞令で楽しかったと言ってくれたのかもしれないが、言ってくれるだけでもうれしいものだ。



「また行きましょうね」



にこりと、笑みを浮かべる蒼。


学校では見せない顔だ。



「俺でよければ・・・でも、一緒に歌ったりできる人と行った方がいいと思うけど」


「うーん。そうですね。まぁ一人で行くのが心細いだけなんで」


「あ、ソレガホンネデスネ」



本音がポロリと出てしまった瞬間。


まぁヒトカラがちょっと勇気のいることなのは想像できる。


だから、誘いやすい陰キャにフォーカスが向いたということか・・・。



「冗談ですよ!」


「まぁ別に何でもいいけど。どうせ暇だから」


「あ、はい。でも、人前で歌うのも結構緊張するものですよ? だから、誰でも良いってわけではないんです」


「そうですか」



ちょっと特別扱いされたような感じはしたが、要するにこれ、雑魚キャラに見られてるってことですよね。


なんか、泣けてくるぜ・・・。


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