第139話「彼女の歌声」


蒼と二人だけで、やってきたところはカラオケボックス。


部屋は薄暗く、そして狭い。



「よーし、歌うよ」


「お、おう」



普段からしてみれば、想像もできないほどにテンションが高い蒼。


彼女にはこんな一面もあるんだなぁと思いながらも、このテンションについていけない俺がいる。


慣れた手つきで曲を予約すると、マイクを手に取って立ち上がる。


流れたメロディに合わせて、彼女が声を上げる。



「す、すごいっすね」


「あはは、ありがと」



歌う彼女の姿は、まるで別人だった。


それほど、蒼は歌うのがうまかった。


そして、彼女のテンションも異次元だ。



「つぎ、村上先輩!」


「あ、僕は・・・」


「そんなこと言わない!」


「あ、はい」



押しが強いな・・・。


とはいえ、音楽なんて普段聴いたりすることは滅多にない。


いや、聴いたりはする。


でも、最近の曲? 流行りの曲? 全部分からない。


知ってるのと言えば、たまに見るアニメの曲か、ゲームの曲。


あとはゲームから興味を持った、他所の国の軍歌とか(笑)



「歌うものがなくて・・・」


「そっかー・・・じゃ、この曲知ってる?」



と、スマホの画面を見せてくる。


画面には、一昔前のデュエット曲。


これなら知っている・・・が・・・もしかして。



「え、これ歌うの?」


「うん。二人で!」


「あ、はい」



俺の音痴な声と、彼女の綺麗な歌声が混ざる。


君は上手いからいいかもしれないが、こっちは恥ずかしくて死にたいよ。


それからは、ほとんど蒼が歌い続けた。


6時間ぐらい・・・。


歌のバリエーションと、一向に枯れない喉が純粋にすごいと思いました(こなみ)


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