第138話「蒼の意外な趣味」


7月下旬。8月も間近に迫ったこの季節は、朝でも昼でも気温が高くて蒸し暑い。


今日も、立っているだけで汗が出てくるような暑さ。


そんな日は、家に引きこもってクーラーの効いた部屋でゲームするのが賢い過ごし方。


だが、今日はそういうわけにもいかない。



「ごめん、遅れたかも」



約束の時間ギリギリに、駅前に到着する。


気乗りしない天気がゆえ、家を出るのが遅くなってしまったからだ。



「大丈夫ですよ」



小さく優しい声が、返ってくる。


三永瀬蒼。今日は、彼女に誘われて一日遊びに行く。


遊ぶとしか聞いていないが、どうするのだろうか。



「今日はありがと」


「うん。別に暇だったし。えっと、どうするの?」


「考えてるよ」



訊いてみると、行くところは決まっているようだ。


蒼とプライベートで会うのはこれで2回目。1回目はすれ違っただけだから、実質初めてのようなものだ。


彼女の趣味嗜好がよく分からないので、果たしてどこへ向かうのか・・・。



「すぐ近くですよ」



そう言った彼女についていく。


どこへ向かうのだろうか。電車、、、バス、、、?


そんなことも想像したが、目的地は想像以上に近かった。



「カラオケ・・・ですか」


「うん」



うん。と言う彼女は、明らかにテンションが高かった。



「カラオケ好きなの?」


「うん!」



蒼のイメージは、物静かな少女だ。


カラオケに行くというイメージは皆無。


だから、意外でしかない。


女の子とカラオケか・・・荷が重いな。


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