第135話「岩船先生のテストは難しい・・・らしい」


クラスにまともな友達もいない俺は、放課後に部活動以外の用事は存在しない。


家に帰ればゲームをすることが主だが、ずっとやっているとさすがに飽きてくる。


ってところで、テスト前は意外と勉強をする俺氏。



「村上って、意外と頭良いんだな」



テスト期間が終了して最初の部活の時間。部室で1学期の期末テストの結果を半ば強引に匠馬に奪われ、そんなことを言われた。


全教科で並みの点数を取っていたということで、別に頭が良いわけではない。



「マジかー。おれ赤点2教科もあるぜ」


「赤点の人は、補習行きなさい?」



と、夕凪先生が優しい笑みを見せながら言う。


その笑みは、匠馬にとって悪魔のように見えたのではないのだろうか。


まぁ俺には関係のないことですけど。



「三永瀬さんは、大丈夫だった?」


「あ、はい」



匠馬の存在がデカすぎるせいで、存在が空気になりかけている1年生の三永瀬蒼。


梅雨の時期は学校を休みがちになっていた彼女も、いつの間にか学校に来るようになっていた。


んで、彼女にテストの結果を軽く訊いたら、そんなあっさりとした回答が返ってきた。



「あら、三永瀬さんは優秀よ」



と、夕凪先生が。


こういう言い方をするということは。



「夕凪先生って、1年生の授業もってるんですね」


「私はほとんど1年生よ」


「あ、そうなんですね」


「岩船先生もじゃない?」


「ア、ソウナンデスネ」



天文部前顧問の岩船先生。そして現顧問の夕凪先生。


どちらも、俺からしたら授業を受けたことのない先生だ。



「岩船先生のテスト、難しい」



ボソッと蒼がそう言う。


岩船先生が先生らしいところを見たことがないので、これは妄想でしかない。


しかし、蒼のその一言は、なぜか納得のいくものだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る