第133話「土砂降りの折りたたみ傘」
梅雨の季節。
当たり前のように降る雨にも慣れてきた頃だ。
学校帰りに、傘をさして道を歩く。
幅の狭い、住宅街の中にある生活道。
イヤフォンをして、音楽を聴きながら歩く。
すると、前方から人影がこちらへ向かってきていた。
普通の道なのだから、人が歩いていることに違和感はない。
でも、すれ違う瞬間、対向の人の顔を見て驚いた。
「三永瀬さん?」
片耳のイヤフォンを外し、思わず振り向く。
土砂降りのなか、折りたたみ傘の彼女は振り向かずに立ち止まった。
「あ、えっと・・・」
背中を向けたまま、そんな声だけが聞こえてきた。
「ごめん、急に話しかけちゃって」
そう言いながら、彼女の方へ近寄る。
背後から彼女の顔が見える位置へ移動する。
改めて顔を見ると、やはり三永瀬蒼だった。
「お久しぶりです」
「うん、久しぶり。最近学校休んでるみたいだけど、どうしたの?」
「あ、えっと、ちょっと調子悪くて」
「調子悪いのに外出してたの?」
「ちょっとね。用事があったから」
「そっか。まだ学校には来れなさそう?」
「うん」
「そっか」
彼女とはそれっきりで別れた。
その日の彼女は、終始俺と目を合わせなかった。
まるで、何かを必死に隠すように・・・。
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