第132話「攻撃こそ最大の防御」


「あ、岩船先生」


「ん? なんだ君か」



休み時間。廊下を歩いていたら、偶然にも岩船先生と鉢合わせした。



「先生、最近どうですか?」


「まぁぼちぼち。気にかけてくれるんだな」


「ま、まぁ」



この人の従兄弟である友奈から、気にかけてほしいと頼まれてるからね。


と、それはまぁ大義名分なわけだけど。



「それで村上。最近三永瀬蒼が部活に来てないって耳に挟んだのだが」


「そうですね。もう2週間ぐらい」


「そうか」


「なんかあるんですか? 体調不良って聴いてますけど」


「担任の先生には、偏頭痛がひどくて休みたいって報告してるそうだ」



偏頭痛か。


今は梅雨の季節。


どんよりとした天気が続き、低気圧の影響を受けやすい季節なわけだ。



「それは大変ですね」


「まぁな」



と、どこか納得してない感じ。


岩船先生がこの微妙な表情を浮かべるときは、大抵ワケありなとき。


平林綾香のときと、ほぼ同じ表情だ。



「先生?」


「なんだ?」


「攻撃こそ最大の防御です。守るためには、早めの行動が良いと思いますよ」


「急にどうした? 孫子の兵法でも読んだのか?」


「いやまぁ、違いますけど。ただ、言っておきたかっただけですね」


「言いたいだけ? 厨二病か?」


「違います。先生ってそんな鈍感でしたっけ?」


「はい?」



理解してくれれば幸い・・・かな。


おおむね1年前の出来事。


それを経験しているがゆえ、どうしても過敏になってしまう。


これ以上、あんな悲劇を繰り返してはいけない。


それは、岩船先生も分かっていることだろう。


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