第124話「教師としてのプライド」


こと座流星群を観測しようとした天文部だったが、ピークが日中のため残念。


時期を遅らせて、みずがめ座η流星群を観測しようとしたが・・・。



「ピークが放射点が昇る前ですし、月齢16なので・・・」



と、三永瀬が指摘する。



「月齢16。満月・・・ですか」



と、俺が9割直感で言うと。



「そうですね」



どうやら当たっていたようだ。



「月齢ってなにかしら」



と、これは夕凪先生の発言。


彼女は天文部顧問になったわけだが、担当科目は社会科で、天文学云々が好きというわけでもないようだ。



「・・・」


「・・・」



あ、誰も答えない感じですね。


俺も実のところ、月齢について理解していない。


そして三永瀬は、俺が答えると思っている。



「えっと、三永瀬さんお願いします」


「あ、私ですか!?」



ひどく驚いたご様子で・・・。


そんなに驚くことですか?



「えっと、月齢は、お月様の満ち欠けの状態を知るために必要な数字・・・ですね」


「オツキサマ」


「可愛い言い方ね、三永瀬さん!」



俺も夕凪先生も、その言い方に意識が持っていかれました。



「ハ、ハズカシイ・・・」


「ごめんね~、三永瀬さん」



頭をナデナデしながら、夕凪先生がそう言う。


なんか、JKと教師って感じが1ミリも感じないのは何故だろうか。


と、それはさておき。



「新月が0で、次の日が1、その次が2って数えていきます。なので、15あたりが満月になるんです」



月齢とはそういうことらしいです。


今回は16ということなので、ほぼ満月ですね。



「そんな数え方があるのね」



と、夕凪先生。


でもここで、三永瀬からちょっと刺さる一言。



「月齢カレンダーとか見たことないですか? 多分中学生で習うと思うんですが・・・」


「あらあら、そうだったの?」



あらあらじゃないですよ。


夕凪先生、もしかして理系科目ボロボロって感じですか・・・?



「二人ともいいかしら? このことは他言無用よ? いいわね?」



おっとりとして、優しく穏やかな表情の夕凪先生。


いまこの瞬間だけは、狂気に満ちていました。


教師としてのプライドですかね。コワイ・・・。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る