第121話「無茶な他力本願」


天文部の部員は陰キャただ一人。の、はずだったのだが・・・。



「三永瀬さんね。私は夕凪奈琴よ。よろしく」


「はい・・・」



もじもじと自信なさげな声だ。


内気なのか、緊張しているだけなのか。


そんな彼女は、三永瀬蒼。


この天文部に入部してきた後輩の女の子。



「三永瀬さんは、どうして天文部に入ろうと思ったの?」



夕凪先生が、三永瀬にそんなことを訊く。



「えっと、星とか、好きだからです」


「へぇ、そうなんだ。やっぱり綺麗だよね」


「あ、はい」


「普段、天体観測とかするの?」


「はい。よくやります」


「そうなんだ。天体望遠鏡とか家にあったりするの?」


「はい」


「すごい! 自分で買ったの?」


「いえ、親が買ってくれて」


「そうなんだ」


「はい・・・」



ぎこちない会話。


きっとコミュニケーションが苦手なのだろう。


安心しろ、俺も苦手だ。


夕凪先生が一方的に質問をしている、面接のような感じ。


俺と他人の会話も、こんな感じなんだろうな。



「んで、部長さん」



夕凪先生の視線が、こちらに向けられる。


なんか、嫌な予感。



「なんですか?」


「せっかく新入部員も入ったことだし、今日はどんなことをするの?」



なるほど、そういうことですか。


今日の活動内容。それを決めろってことですね。



「そうですね・・・えっと、三永瀬さん? だよね。何がしたい?」


「え、私ですか!?」



急にそんなこと訊かれても、困るだけか・・・。


とはいえ、俺に任せると「何もしない」という風になってしまう。


天文に興味があるようだし、ここは彼女に決めてもらおう。



「え・・・えっと・・・」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る