ChapterⅤ

第116話「村上友彦は今日から高校2年生です」


岩船先生が、弱音を吐いた。


顧問を辞めたい。


天文部の部員は現状俺だけだ。


俺がどこかの部活に転部すれば、岩船先生は心置きなく顧問の仕事から退くことができる。


でも、その俺がヘタレすぎた。


他の部活・・・。友達もいない、人付き合いも苦手。


軍隊のような縛りがある空間を嫌う俺には、肌に合うような部活が見つからない。


というか、天文部の居心地が良すぎた。


それからだらだらと時を引きずっていたら、気づいたら新学期だ。



「おはようございます。退院おめでとうございます」



始業式の日。朝のHRが始まる前に、部室へと足を運んだ。


するとそこには、岩船先生の姿があった。



「おはよう。まさか昨日退院するとはな・・・」



友奈から話は聞いていた。


岩船先生は偶然なのか必然なのか、新学期がはじまる前日の昨日に退院したらしい。


なので、新学期から仕事復帰ができた模様。



「見た感じ、元気そうで何よりです」


「元気じゃないぞ。春休みというクソほど忙しい時期に寝込んでしまったせいで、やることが山積みだ」



先生の仕事は、楽じゃないみたいです。



「それで岩船先生」


「なんだ?」


「部活の顧問の件なのですが・・・」



答えを出せずに引きずっていた。


でも、俺のわがままで岩船先生を困らせるわけにはいかない。


覚悟は・・・できている。



「あぁ、その件なら解決したぞ」


「はへ・・・?」



他の部にいきます。


そう言おうとしたのに、それを遮られてしまった。


問題が解決したとはどういうことだ?


もしかして、岩船先生はこれからも天文部の顧問を続けてくれるのか?



「そろそろ、来るはずだ」


「え、来る・・・?」


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