第109話「不穏な空気。不思議な感覚」


セシルの留学期間最終日。


今日の夜には、セシルは飛行機でヨーロッパへ帰ってしまう。


でも、昨日の出来事がどうしても脳裏をよぎる。


彼女がどんなことを思っているのか、急に分からなくなった。


いや、今までも分かっていなかった。


分かった気になっていただけなのだろう。


気持ち的にも、ネガティブな思考になってしまう。


そんな感じのまま、何となくで学校へ向かう。


今は春休みだ。登校する必要なんてない。


でもなぜだろうか、足が勝手に動いたような気がした。


何となくで部室へ向かうと、そこには。



「あれ、友彦」



セシルの姿があった。



「あ、えっと」



気まずい。そう感じた。


なんで彼女がここにいるのだろうか。


いてほしくなかった。


ただただ、気まずい雰囲気。


でもそれは、こちらだけが感じていたようで。



「どうしたの? こんなところに来て」



セシルは、気味が悪いほど気さくだった。


昨日のことなんて、何事もなかったかのように、いつも通り。



「いや、その・・・何となく」


「そっか」


「セシルは?」


「私はね、別れを惜しんでた」


「帰国、今日だよね」


「うん」



やはり、気まずい。


セシルは、昨日のことを気にしているのだろうか。


いや、絶対に気にしている。


だからこそ、俺からその話題に持っていかないといけない。


そんな気がした。


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