第107話「ささやかな予定。不吉な予感」


春休み中の部活は、もちろんお休みになった。


友達もいない俺は、特に予定がないまま、家でひたすらゲームをする日々。



『生きてる?』



ある日突然、そんなメッセージが届いた。


誰からのメッセージかと思えば、それはセシルからだった。



『生きてるよ』



返信したら、その返信は一瞬で返ってきた。



『岩船先生どうなの?』



そういえば、セシルには何も話していなかった。


倒れたことも話していないので、岩船先生のことを気にするのはどういうことなのだろうか。


どこかから情報を仕入れたのだろうか。


まぁでも、そこはどうでもいいこと・・・なのかな。



『入院してるよ』



以前に友奈から言われた。


こういう時、岩船先生が入院していることを隠すべきなのか。


そしたら、関わりの深い人になら話してもいいと言われた。


セシルは天文部でそれなりに深い関りをしているはずだ。


だから、大丈夫・・・な、はず。



『そうなんだ』



意外とあっけない返事が返ってきた。



『セシルはいつ帰るんだ?』



話題は変わって、セシルはこの春、両親のもとへ帰る。


留学期間はまだまだあるはずだが、急遽予定変更になってしまった。


以前に出発する日を聞いたのだが、忘れてしまった。



『明後日だよ。忘れたの?』


『あさって!?』



めちゃくちゃ直近だった。



『空港まで行ってもいい?』


『いいけど、どうしたの?』


『どうしたって?』


『なんか、友彦らしくない』


『そうか? 見送りぐらいするのは普通だと思うけどな』


『ふつう?』


『ふつう・・・だと思うよ』


『ねぇ友彦、明日会えない?』


『あ、うん』



急なお誘い。


何かあるのだろうか。


それとも、何か怒らせてしまったのだろうか。


とにかく、予定のなかった春休みに、ささやかな予定が入った。


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