第106話「想像もしなかった新たな一面」
「超わかりやすく言うならば、うつ病。かな」
と、友奈は答えてくれた。
「うつ? それで倒れるものなんですか?」
「普段はそんなことないよ。でも、薬を飲むとたまーにそうなちゃって」
「岩船先生って、普段から笑うような人じゃないですけど、あれはあれで楽しんでると思ってました」
確かに岩船先生は、普段は無表情だ。
しかし、あれは楽しくないから・・・という意味ではなく、そういう人間なのだと思っていた。
ただ無表情なだけ。内心はそんなことない。
俺やセシルと、普段の部活や旅行。俺はちょっとだけ、プライベートでもゲームを一緒にしたり。
ちゃんと趣味があって、教師という仕事もあって。
だから、そんな岩船先生がまさかうつだったなんて・・・想像もできなかった。
「楽しんでると思うよ。特に君の存在は大きい」
「おれ、ですか?」
「佳奈美ちゃん、君のことが相当お気に入りみたいだからね」
「そうなんですか?」
まぁでも、先生と生徒という関係で、プライベートにゲームを一緒にするなんて普通じゃありえないか。
同じ趣味を持つ人間がいて、自分の好きな天文学に興味を持ってくれて。
俺が岩船先生の立場だったら、そんな奴のことを気に入るのは当然なのかもしれない。
「君が岩船先生の支えになるかもしれない。心がデリケートという意味では、かなりめんどい相手かもしれない。でも、どうか見捨てないでほしい」
心がデリケート。
今まで、岩船先生に対してそんな印象を受けたことはない。
でも、表に見せてないだけで、実は物凄くデリケートなのかもしれない。
「見捨てることはないですよ。でも、俺が支えになるかは分かりません」
だって、そんな自信がないから。
見捨てることはしない。
だって、学生時代は天文部に所属するつもりだから。
でも、卒業したら・・・。
平林綾香の件もあるし、誰かの支えとか、誰かのためとか。
なんか、荷が重すぎる。
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