第103話「意外とさみしがりやなのかもしれない」
病院内にある自動販売機で、紙パックのコーヒーを買う。
それを病室まで持っていき、岩船先生に差し出す。
患者に勝手にこういうものを差し入れていいのか分からないが、まぁ後の祭りってやつだろう。
「その、先生は・・・」
「なんだ?」
「えっと、容態、大丈夫なんですか?」
なんで倒れたんですか?
ストレートに言いそうになってしまった。
でも、そういうわけにはいかない。
言いたくないことかもしれない。
だとしたら、岩船先生を困らせてしまう。
「容態か。まぁ、それなりには」
「そうですか」
「あまり心配しないでくれ」
「よくあるんですか?」
「まぁ、たまにな」
「そうだったんですか」
丸1年間、部活動を中心に岩船先生と関わってきた。
そのなかで、体調に不安があるような素振りは一回も見せなかった。
だから、すごく健康で、丈夫な身体なのだと思っていた。
「村上」
「なんですか?」
「帰ってもいいんだぞ」
「帰ってほしいんですか?」
「いや・・・そういうわけではないが」
小さな声で、呟くようにそう言う。
ちょっと恥ずかしそうにしている岩船先生は、かなりの激レアだ。
写真を撮っておきたいところだが、彼女は目線をそらすどころか、寝返りをうつように背中をこちらに向けてしまった。
「帰りませんよ。これから友奈さんも来ますし」
「好きにするといい」
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