第101話「病室のドアの先」


岩船先生は、救急搬送された。


その旨を、すぐに友奈に連絡した。


友奈というのは、飯田友奈。岩船先生の従兄弟であり、俺と面識のある先生の親戚。


返信は、送信した20分後に返ってきた。



『連絡ありがと。さっき病院から電話があったよ』


『そうですか。あの、先生の容体は・・・』


『命に別状はないよ』


『なら良かったです』



命に別状はない。それだけで、安堵していいのかは分からない。


岩船先生は、寝ているのと勘違いしちゃうレベルで、ピクリとも動かずに倒れていた。


命に別状がないとしても、普通じゃないことは確かなはず。



『あの、搬送された病院って、教えてくれますか?』


『いいけど、まだ見舞いはできないわよ』


『それでも構わないので』


『わかった。URL貼っておくね。私も今から向かうから』



そんなメッセージと共に、マップにピンが刺された状態のURLが送られてきた。


高校からほど近い大きな病院。


荷物を持って、学校を飛び出す。


走る必要なんてないはずなのに、足が勝手に走り出す。


そして息が切れて、歩き出す。


でもその歩は、明らかに早歩き。


ほどなくして病院につく。



「岩船佳奈美さんですね。508号室です」


「あ、はい」



病院の受付で、ダメもとで面会の申し出をしてみた。


友奈から面会はできないと言われていたが、訊いてみればあっさりと部屋に案内された。



「岩船先生。入りますよ」



ノックをして、病室の前でそう言う。


そして、ゆっくりとドアを開ける。


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