第97話「この時の作者の気持ちを答えなさい」


セシル的には、学年末試験で落第して、進学が不可能になっても関係はない。


とはいえ、日本に滞在して、日本の学生である以上、テスト勉強はしっかりしてもらいます。


セシルの得意教科は英語。なので、セシルからは英語を教えてもらいます。


逆にセシルの苦手教科は国語。なので、セシルには国語を教えてあげます。



「日本語難しいネ」


「セシル、喋るのはうまいと思うよ」


「ホント?」


「うん。流暢に喋れてると思うし、言葉のチョイスも不自然じゃない」



もちろんちょくちょくカタコトになるところはあるが・・・。


とはいえ、半年前に比べたら、格段に成長している。



「ならさ、私もう国語の勉強する必要なくない?」


「それとこれとは話が別。セシルは実際に、国語の成績悪いじゃないか」


「ソウダケドサ」


「うーん・・・でもなぁ」



国語は国語でも、やっているのは現国。


つまり、小説を読んでどうこうって感じの勉強。


これは日本語ができるからどうこうの話ではないような気もする。


読解力はもちろん問われるが、物語を理解する必要があるため、日本人でも難しい課題ではある。


中でも最も難関なのが・・・。



「この時の作者の気持ちを答えなさい? 友彦、コレドウイウイミ?」


「それは俺にも分からない」



こればっかりは難しい・・・というか、誰も分からないはず。


こんな問題を出題する教師は、一体どんな神経をしているのやら。



「ならこれ、どうすれば正解なの?」


「作者の気持ちじゃなくて、国語教師の気持ちって置き換えればいいんじゃない?」


「それ先生の気分次第じゃん」


「そうなるね」


「はっ!? まさかこれが思想教育!?」


「多分違うと思う」


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