第92話「頭に残るその話」


正月が終わると、すぐに三学期が始まる。


三学期は3か月という短い期間だ。しかし、期末テストという大きなイベントが待ち構えている。


とはいえまぁ、そのイベントも2月まではないので、とりあえず普通の日常だ。


年末年始は岩船先生と、その従兄弟である友奈と過ごした。


そこで聞かされた岩船先生の過去。俺が知ってどうするんだって話ではあるが、知っている以上は意識してしまう。



「・・・」


「・・・」


「・・・なぁ村上」


「なんですか?」


「さっきからジロジロ見て、どうしたんだ?」



部室。備品のソファーで靴を脱ぎ、寝転がるように小説を読む岩船先生から、そう言われてしまった。



「あいや、特に」


「友彦は先生のこと気になちゃってるんだ」



そこへ、茶化しをいれるセシル。


気になっているというのは間違ってはいないが、ちょっとニュアンスが違う・・・と思う。



「違います」



なので、一応否定しておく。



「友彦は先生の黒タイツが性癖かな?」


「違います」



岩船先生はいつもレディーススーツだ。


そんな恰好で、足を延ばしてソファーに横たわるのもやめてほしいって感じではあるが・・・。



「私の顔に、何かついてるのか?」


「それも違う」


「なら、なにか相談でも?」


「ありません」


「今日の村上、どこか変だな」


「それは・・・すみません」



どうしても気になってしまう。そして、意識してしまう。


知らぬが仏という言葉が身に染みる。


岩船先生には悪いが、こんな話、知らない方が良かった。


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