第87話「her history-Ⅱ」


高校に通いながら、自分の生活費を稼ぐべく、コンビニでバイトをはじめた。


それだけでも忙しい日々なのに、佳奈美にとっての地獄はある日を境に始まる。



「告白されたらしい」


「え、岩船先生が?」


「おいおい友くん、その言い方はちょっとひどいんじゃないか?」


「あいや、そういう意味では・・・でも、それがどうして地獄に?」


「その彼氏がちょっとね」



告白してきたのは、バイト先の先輩。


18歳の大学一年生で、3年も年が離れている。



「最初は断ったらしいんだけど、何度もしつこいほどにアタックしてくるから、最後はそれに負けちゃったらしいんだ」


「つまり、付き合うことになったと」


「そういうこと」



バイトに高校。その二つだけでも忙しい日々。


そんな中、恋人までできてしまった。



「佳奈美ちゃん、ますます多忙になってね」


「確かに、聞くだけでも忙しそうですね・・・」


「それだけならいいんだけど、その彼氏ってのが、かなり面倒な奴で」


「面倒な奴?」


「当時はメールだったんだけど、それが頻繁にきてね。電話ももちろん。出なかったらしつこくせまられたらしい」


「それは面倒ですね」


「それに、執拗に性交やスキンシップもされたらしい。相手がバイト先の先輩だったから、バイト中とかも・・・ね?」


「うわぁ・・・」



それが良いのか悪いのかは知らないが、少なくとも、佳奈美は嫌がっていた。


それはやがて、ストレスという感情になり、身体に蓄積されて、疲労となっていく。


疲労とストレス。それらを貯蔵できる量は、人によって異なる。


でも、共通して言えることがある。それが・・・。



「いつかは限界を迎え、溢れ出る」



佳奈美は、倒れてしまった。


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