第85話「綺麗なのは夜景のほう」
元日の真夜中。俺と友奈の二人で歩いていると、やがて公園にたどり着いた。
その公園は、以前に天文部の活動で訪れたことのある公園だ。
俺と岩船先生と、そして平林さんと・・・。
その時は、何もない芝生の上でひたすら空ばかりを見ていた。
でも今日は、展望台から街を見下ろす。
「綺麗ですね」
「あ、私のこと?」
「夜景のことです」
「冷たいなぁ」
と、そんな会話はさておき・・・。
「佳奈美ちゃんのことだけどね」
「はい」
展望台にあるベンチに座ると、彼女は夜景に目線を向けながら、静かに語り出す。
「佳奈美ちゃん、子供の頃はどんな子だったと思う?」
「子供の頃・・・いまと変わらないと思いますけど」
「ということは、物静かな感じかな?」
「そうですね」
今の岩船先生のイメージは、物静かで落ち着きのある感じだ。
冷静沈着というか、いつも平静。
クールな感じだ。
しかし、そんな先生にも可愛らしい一面があったりする。
完璧な性格ではない。だからこそ、好感を持てる。
俺の中では、そんな人だ。
「友くんは、今の佳奈美ちゃん、好き?」
「好き・・・って言うと、誤解を招きそうなので、良い人だと思う。と、言っておきます」
「あはは。そっか。これさ、友くんに話すか悩んだんだけど、やっぱり話すね」
「あ、はい」
俺に話すか悩んだこと。
それは恐らく、さっき口にした子供の頃の岩船先生のことだろうか。
時刻は午前2時ちょっと前。
友奈は、従兄弟である岩船先生について、話し出した。
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