第81話「ここまで期待させておいて」


「んで、肝心の年齢だけどね」



ニヤニヤっとした顔で、友奈は言い放つ。



「佳奈美ちゃんの年齢は・・・と、思ったけど、私の年齢もバレそうだからやーめた」


「え、えぇ・・・」



ここまで期待させておいて、最終的に言わないんですね。


とはいえ、20代後半というのはわかった。


だから何だってレベルのはなしではあるが。



「友くんは、どうして天文部に?」



今度はそんな質問。



「正直なところ、部員が少ないから・・・ですね」


「じゃ、天文とかには興味ないんだ」


「まぁ・・・。でも、少しは」


「あはは、佳奈美ちゃん聞いたら泣きそうだね」


「そんなもんですかね」


「佳奈美ちゃん、あれでも天文学は好きな方よ」


「まぁ、結構詳しいですよね」



もしかしたら、教師としては当たり前の領域なのかもしれないが・・・。



「好きなことを仕事にできてるって、すごいことだよ」



友奈は、得意げにそう言う。



「好きなこと・・・ですか」


「ちなみに友くんは、将来の夢とかは?」


「これと言ってないですね」



これと言って、その一言をなしにしても的確である。


将来の夢なんて存在しない。


やりたいことがあるわけでもない。


こんな仕事がいいなぁとか、そういうのもない。


何もないのだ。



「決めといた方がいいわよ。こんな仕事がしたいとか」


「そうは言っても・・・」


「ま、私が友くんぐらいの時は、仕事のことなんて全く考えてなかったからね。そういう反応になるのもわかる」


「えっと、友奈さんは何の仕事を・・・?」


「ナイショ」


「な、内緒ですか」



内緒らしいです。


まぁ何でもいいですけど。


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