第79話「相手をしてもらう」


どういうわけか、岩船先生の家に来てしまったようだ。


まぁここで引き返すわけにもいかないので、おじゃまする。


というか、ためらう要素は特にない。


玄関に入ると、狭い廊下がある。


いや、玄関も狭い。狭い廊下とほぼ同じ幅しかない。


1人がやっと通れるぐらいの狭さ。


そんな玄関に靴を並べ、廊下を抜けると、そこには居間があり、そしてそこには・・・。



「お、来たね」



手を振り、にこやかに迎えてくれる女性。



「飯田さん。お久しぶりです」


「友奈でいいよ。久しぶりだね、友くん!」



友くんと呼ばれるのも久しぶりだ。


友奈は、ベッドの上に座っていた。



「すまないが、年末年始はこいつの相手をしてもらう」



そう、岩船先生が言う。


こいつというのは、先生の目線的に友奈で間違いないだろう。


そこまでは分かる。


でも、相手をしてもらう・・・とは?



「えっと、つまり・・・?」


「つまり、そういうことだ」



どういうことですか。


赤子の面倒を見るってわけでもないし、相手をしてもらうってどういう・・・。



「私は買い物がある。早速だが、二人で留守番をしてもらうよ」


「あ、俺も行きましょうか?」


「いや、一人でいい。年越しそばを買うだけだ」


「そうですか」



あらかじめ用意しておいたのだろうか。


岩船先生は、バッグを持ってそのまま外出。


その姿は、逃げる人のようだ。


そして部屋には、友奈と二人だけになってしまった。



「よし、友くん」


「はい」


「早速話そうか」


「はい?」


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