ChapterⅣ

第78話「師走の候、年の瀬」


クリスマスが終わると、休む間もなく年末がやって来る。


だからと言って、何かあるわけでもないが・・・。


俺の家は帰省もしないし、旅行に行くわけでもない。


毎年予定もなく、ただゲームをして過ごすのだが、今年だけは違った。



「来たな」



そう言うのは、私服にコート姿の岩船先生。


近所の公園に来いと言われて来たが、それ以上は何も聞かされていない。



「こんにちは、えっと、部活ですか?」


「まさか」


「ですよね」


「ついて来い」


「あ、はい」



理由を尋ねる暇も与えず、岩船先生は歩き出してしまった。


ということで、ついていきます。



「村上」


「なんですか?」


「友奈は、苦手か?」



歩きながら、そんなことを聞かれた。


飯田友奈。岩船先生の従兄弟で、明るく陽気な性格。


少なくとも、俺には優しい人。


他の人に対してどんな接し方をしているのかは分からない。



「全然、そんなことないですけど」


「そう? ならいいのだが・・・」


「なんで、そんなことを?」


「まぁ・・・な?」



わざわざそんなことを聞くということは・・・。


何となくで想像を膨らませ、そんなことをしていると、目的地に到着する。



「ここだ」


「ここ、ですか?」



そこは、小さなアパートだった。


屋外にある階段で2階に上がり、通路を中間地点ぐらいまで歩いて立ち止まる。


ポケットの中から鍵を取り出すと、扉の施錠を解除する。



「入れ」


「え、えっと」


「私の家だ」


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