第72話「時間はありますけど」


「そろそろ冬休みだが、村上は帰省するのか?」



12月の中旬。冬休みというときめく単語が聞こえる時期になった。



「帰りませんよ。そもそも、ここが地元ですし」


「そうか。セシルはどうするんだ? 正月というより、クリスマスだろうが」


「うーん・・・どうしようかな」


「決めてないんですね」



クリスマスまであと1週間と数日というのに・・・。



「友彦、ついてくる?」



悩んだ末、何を思ったのか俺を誘ってくるという。


セシルって、帰省するとしたらどこになるのだろうか。


色んな国を渡り歩いてるらしいが・・・。



「ど、どこに連行されるんですか」


「帰省だよ? 父と母が暮らしてる家よ?」


「それはどこにあるんですか?」


「フランス」


「却下です」



バイトしてない高校生に、フランスまで行くお金はないです。


時間はありますけど()


んで、それはそうと・・・。



「岩船先生は、帰省するんですか?」


「わたしか? どうしようかな。迷ってるところだ」



岩船先生も悩んでるようです。


帰省って経験したことないから分からないのだが、帰るかどうかで迷うものなのか?



「村上、ついてくるか?」


「なんでセシルと同じ質問をするんですか」


「いやまぁ、友奈が君と会いたがってたからな」


「え、おれ?」



ちなみに友奈とは、飯田友奈のことだ。


岩船先生とは従兄弟同士の関係。



「友彦、ユウナッテオンナダレ?」



そんなセシルからの質問。


それに回答したのは、俺ではなく・・・。



「私の従兄弟だ。別に友彦に異性としての好意があって会いたいって言ってるわけではないと思うぞ」



岩船先生だった。



「なるほど! いや違う、先生わたしそんなこと言ってない。トモヒコノコトスキジャナイ」


「・・・」


「・・・」


「二人ともなんで黙るのよ!?」


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