第69話「人数合わせは重要」
帰りの特急列車。今回の旅行は3人で行ったわけだが、3人というのは何とも中途半端な感じだ。
というのも、今回の旅行で移動手段に選んだのが鉄道。
長い距離を乗るということで、特急列車に課金をしているわけだが、大抵の特急列車は2人掛け1セットの座席が横に2列並んだ計4人掛け。
前後の座席を指定しても、左右の座席を指定しても、4人でちょうどいい感じになるような設計。
なので、3人だとかなり微妙なことになる。
「私は寝ていたいから、二人でイチャイチャしたまえ」
と、あくびをしながら言うのは岩船先生。
「りょうかい!」
と、そんなことを言いながらおれの腕をとるセシルさん。
最近、この二人のノリについていけてない気がするのはおれだけだろうか。
「セシルさん、女の子なんだから岩船先生の隣に座ればよかったのに」
「どうして?」
「えぇっと、おれの隣は嫌でしょ?」
「そんなことないよ?」
「それならいいんだけど」
いまさらだが、セシルって人との距離感がずいぶんと近いような・・・。
ヨーロッパでの生活が長いとのことだが、向こうではこの距離感が普通のことなのだろうか。
日本だと、どこか男女は別々っていう慣習があったりなかったりするが・・・。
「そういえばセシルさん・・・」
「あ、それ!」
「え?」
「友彦、私の名前呼ぶのなんか変」
「そう?」
「さん付けたり、付けなかったり」
「あぁ・・・どっちが良いんですか?」
「もちろん付けない方」
「あ、はい。ならその方針で」
「はい、言ってみる」
「え?」
「私の名前」
「せ、せ・・・」
なんか、改まって言おうとすると、けっこう恥ずかしい。
「ん? なに?」
「せ、セシル・・・」
小声で、照れくさそうに言いました。
これでいいでしょう?
「まぁ友彦にしては上出来ね」
「えぇ・・・」
ちょっとムカッとしたのは内緒である。
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