第62話「星々の光」


アンドロメダまでの距離は、太陽系からおおよそ230万光年。光の速さでも230万年かけて移動する距離だ。


そんな途方もなく遠い銀河だが・・・。



「あそこがアンドロメダだよ」



セシルが空を指さす。


そこには、ボヤ―っとした小さな雲のようなものが見えた。



「これがアンドロメダ? 肉眼でも見えるんですね」



言われなくちゃ分からないレベルな上、細長い楕円形をしている何かそう言ったもの・・・程度にしか見えない。


とはいえ、肉眼でもうっすらとは見える。



「望遠鏡で見ればもっと綺麗なはずだよ」


「そうか。でも、本当に期待しない方が良さそうだね」



肉眼だと、他の星とも相まってよく分からない感じ。


確かにボヤ―っと見えるのだが、それが本当にアンドロメダなのか微妙なところ。



「あれ、230万年前の光だって思うと、感動するところあるよね」


「230万年前の光なの?」


「だってほら、230万光年離れてるんだから」


「あぁ・・・言われてみれば」



光の速さで230万年かけて移動する。


それはつまり、それだけの時間をかけて、いま俺らの目に届いてるわけだ。


そりゃ感動だ。



「準備できたぞ」



岩船先生が言う。


セシルから順に、おれも望遠鏡をのぞく。


そこには、肉眼で見た時のうっすらとした雲のようなものが大きく見えた。


とはいえ、その程度だ。


肉眼よりも楕円形がハッキリとわかって、たしかに迫力はある。


渦巻きも、それっぽいものが見えて感動した。


しかし・・・だ。


期待するなという岩船先生の言葉通り、所詮はその程度か・・・と言った感じだ。



「望遠鏡で見ても、何だかうっすらとしていますね」


「仕方がない。アンドロメダの光は4等級ぐらいだからな」



4等級・・・岩船先生はそう言うが・・・。



「それ、どのくらいの明るさなんですか?」


「どんなに好条件でも、肉眼で見える限界は6等星。等星が一つあがるごとに、明るさは2.5倍になる」


「なるほど、よく分かりませんね」


「分からなくていい」



なんかすみませんね。


まぁでも、暗いというのはわかった。


今いる場所は、辺りに光源がほとんどない好条件な位置。


だからこそ、4等星のアンドロメダが肉眼でもうっすら見えたわけだ。


それからも、2時間ほど天体観測を続けた。


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