第61話「名前がなんかカッコいい」


岩船先生は、大きなリュックサックを背負っていた。


これから登山でもするんですか? そう言わんばかりの大きさの。



「あ、これ望遠鏡だったんですね」



そのリュックの中からは、天体望遠鏡のパーツが出てきた。


このためだけに、こんな荷物になるものを持ってきたのか。



「今日は暗い星も見えると思うぞ」



そんな期待を口にする岩船先生。


空を見上げると、肉眼でも見える満天の星空。


今日は快晴だ。



「この時期だと、何が見えるんですかね」


「この時期のこの時間だと、四辺形が見えそうだな」



いまの季節は11月初旬。時刻は20時過ぎだ。



「三角形シリーズの派生みたいなものですか?」



夏の大三角形とか、そういうの。



「まぁそんな感じだろう。四辺形なら肉眼でも見える。今日はせっかく望遠鏡があるんだから、その近くにあるアンドロメダでも見るとしよう」


「アンドロメダって、アンドロメダ銀河のことですか?」


「そうだな」



さすがにアンドロメダ銀河は知っている。名前がなんかカッコいいよね。


教科書とかで見るのは、きれいな星雲とか渦巻きなどの構造。


それを期待してみたりするが・・・。



「期待はするなよ?」



岩船先生に、そう言われてしまいました。



「今日は条件悪いんですか?」


「いや、そもそもが遠すぎるのと、暗すぎる」


「ほう・・・?」


「つまりネ、天体写真で見るような綺麗な感じには見えないよってコト」



と、ここはセシルが説明してくれました。



「天体写真って、光を一定時間かけて蓄積して撮影する。だから、肉眼で見るよりきれいに見える」


「そうなんだ・・・セシルさん詳しいね」


「アタリマエダ。わっははは」



すごく棒読みな笑い方だ。


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