第60話「出かけるぞ」


日が暮れて、辺りは完全に真っ暗になった。


夕食を食べ終えてから数十分といったところで、岩船先生が言う。



「出かけるぞ」



と・・・。



「はい?」


「我々は、なに部だ?」


「天文部です」


「出かけるぞ」


「はい?」



ということで、旅館の外に出る。


部屋のカギを預ける際に、従業員から十分注意するよう指摘された。


なぜそんなにも慎重になるのか。その意味は、すぐに分かった。



「くらっ!?」


「Pitch dark」



狭い山道は、旅館に通ずる唯一の道だ。


舗装はされており、乗用車が一台通れる程度の広さで、横は崖と谷。


そして、街灯など一切ない。


所々に・・・というわけではなく、見渡す限り一切ない。


ひたすらに暗闇が続いていく。



「従業員の方があれだけ心配するのも分かりますね・・・」


「まぁ大丈夫だろう。昼間に下見はしてある」


「下見してたんですね」


「一応な。ここら辺が真っ暗になるのは、歩いていれば何となく予想できた」



そんな会話をしつつ、舗装された道をまっすぐ歩く。


岩船先生についていった俺とセシルだが、どこに行くのかは知らされていない。


それから15分ぐらいだろうか。


どこまで歩くのかと思っていたら、急に歩を止める。



「ここら辺でいっか」



いかにも適当って感じの口調。


先生が歩を止めたのは、上方向の視界が開けた場所。


山の頂上というわけではなさそうだが、限りなくそれに近い感じだ。


ちなみに、辺りに民家はほとんどない。


スマホのライトを頼りにするしかないほど、真っ暗。



「ここで、何をするんですか?」


「天体観測だ。それしかなかろう?」



なるほど、そういうことか。


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