第56話「山奥で自由行動と言われても」


岩船先生とセシルとおれは今、長野県の松本駅にいる。


ここまで電車でガタゴト。今日から泊りがけの旅行だ。



「まずは・・・」



辺りを見渡し、そして目的の建物を見つけてまた言う。



「あそこに行くぞ」



そう言う岩船先生が指したのは・・・。



「レンタカー?」


「そりゃ、田舎だから車の方がいいに決まってるだろ」


「あー・・・まぁそうですね」


「予約もしておいたからな」



意外と用意周到ですね。


とはいえ、重い荷物もあるので、それを持ち歩くのも一苦労。


理にかなっているというか、純粋に賢い選択だと思う。



「それで先生、どこに行くんですか?」



車に乗り込み、先生の運転で走る。


最初は目的地を聞かずに、先生に任せていた。


しかし、どんどん山奥に車を走らせていくものだから、気になって尋ねてみる。



「今日は観光地らしい観光地に行く予定は無い。まずは旅館に行って、私はそこからその辺を散策する。きみたちは自由にしていいぞ」


「自由行動なんですね」


「明日は市街地の方に行く予定」


「了解です」


「きょう自由なの?」



一人後部座席に座るセシルが訊いてくる。



「そうみたいですよ」


「温泉ある?」


「あるらしいぞ」



と、これは岩船先生が。



「やったー!」


「セシルさん温泉好きなんですか?」


「ううん、入ったことすらないよ」


「えぇ・・・」


「だから楽しみ。日本は温泉があちこちにあるって聞いたから」


「まぁその辺の地面掘っていけば水が出る地質だからな」



いやさすがに・・・って思ったが、これでも一応は理科系の岩船先生の発言。


自宅を掘って温泉湧きださせたって話もたまーに聞くし、あながち間違っていないのかもしれない。


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