第55話「フリー百科事典の音読」


旅行は信州に行くということで決まったが、具体的にはどこに行くのか・・・。



「そういえばセシルさんは、長野って知ってますか?」


「ナガノ?」


「うん。こんな感じの」



そう言って、紙に書いてみせる。


文字ぐらいなら見たことあるかな? と思ったのだが・・・。



「long field?」


「間違っちゃいないんだけど」


「長野県(ながのけん、(英: Nagano Prefecture)は、日本の中部地方に位置する県。県庁所在地は長野市で、善光寺の門前町として発展し、第18回冬季オリンピックの開催都市である。令制国名の信濃国にちなみ「信州」とも呼ばれている。海に面していない内陸県であり、日本アルプスを始め大規模な山岳地があるため可住地面積率は低い。キャッチフレーズはしあわせ信州」


「先生はフリー百科事典の音読をしないでください」


「はえー、長野って人口200万以上もいるんだ」



はなし聞いてませんね。


ということで、強引に話を元に戻します。



「どこ行くんですか?」


「うむ。色々まわるじゃダメなのか?」


「そんな時間あるんですか?」


「どっかに泊まれば行けるだろ」


「え、泊るんですか?」


「泊まらないのか?」


「あいや、日帰りだと思ってました」


「それならわざわざ連休を選ばないだろ」


「まぁ・・・たしかに。というか、そんな大事なことは先に言ってくださいよ」


「どうしてだ?」


「色々と準備することがあるんです」


「え、なにを?」



うーん・・・なんでしょうね。


発言はそれっぽいことを言ったが、実際は中身のない言葉だった。



「村上、君はそんな人間ではないと思っている。だが、念のため私とセシルとは部屋をわけるか考えておくよ」



突然何を言ってるんだ? と思ったが、岩船先生の中で何かしら思い直すところがあったようだ。


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