第50話「カルチャーショック」


セシル・ド・モンクティエ。イタリア生まれで、ヨーロッパの国々を転々としている女の子。


イタリアでは4年。イギリスも4年。ドイツに6年。スイスに2年。フランスに1年住んで、日本にやって来た。



「セイルさんにとっては初めてのアジアだと思うんだけど、なんで日本を選んだの?」



素朴な疑問だったので、聞いてみる。


アジア圏だと、日本以外にもたくさんの国がある。


英語が通じる国も多々あるのだから、そういう国に行った方が、言葉の壁も薄いとは思うが・・・。



「日本の文化、わたし好き」


「日本の文化? 例えば・・・?」


「うーん・・・告白?」


「「こくはく?」」



想定外すぎる発言に、思わず読書をしていた岩船先生も声を上げる。


そしてハモる。



「え・・・?」



この空間にいる日本人二人が驚くものだから、セシルも動揺してしまう。



「えっと、なにか違うこと言った?」


「あいや・・・告白が日本だけの文化なのは知らなかった」


「日本だけなのかは分からない」


「でも、ヨーロッパとかじゃ・・・」


「私の知る限り、ない」


「素朴な疑問だが、それなら欧州の人たちはどうやって恋人同士になるんだ?」



と、これは岩船先生の発言。


それに関しては俺も気になるところだ。



「うーん・・・自然と?」


「「しぜん?」」


「流れでさ。ほら、ずばーーーっと」



流れでずばーーーっと自然に恋人同士になるらしいです。


セシルさんもう少しだけ語彙力をつけてください。



「全然伝わらないのだが・・・」


「仲が良いから始まる。それで、友達とかに紹介される時、僕のガールフレンドなんだ。とか言われると、あー、わたしこの人の恋人なんだなぁって」


「そ、そうなんだ」



日本ではまずありえない話だ。


何と言うか、カルチャーショックってこういう感じなんだな。



「ちなみにセシルさん、今までに恋人とかは・・・」


「いない」


「あ、はい・・・なんかすみません」


「別に気にしてないよ。みんな時間をかけて恋人になるから、引っ越しが多かった私には縁のない話なの」


「時間をかけると言っても、セシルさん数年単位で特定の国に住んでましたよね?」


「うん。でも、いつ引っ越すか分からないからさ。我慢だよ」


「その言い方だと、チャンスはあったみたいな感じだな」



これは岩船先生の発言。


まぁチャンスはいつでもあるんじゃないですかね。


例えば俺にだって、この学校は共学なんだから、女子がいる。


つまり、可能性は限りなく低いが、チャンスがないわけではない。



「仲の良かった男の子はいたよ」


「仲の良かったって、どのくらい?」


「ドノクライ?」


「恋人の一歩手前ぐらいまで進展してたのか?」


「うーん・・・そうなんじゃないかな? よく二人で遊んでたし、キスとかもしてたし」


「「キスして恋人じゃないのか!?」」



またハモりました。


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