第51話「あの人はいま」


「うーん・・・そうなんじゃないかな? よく二人で遊んでたし、キスとかもしてたし」


「「キスして恋人じゃないのか!?」」


「あいや、人によると思う。私はそのくらいまでした。だけど、分からないの」


「分からないって何が?」


「日本は告白の文化があるから、その人と恋人という関係なのか、はっきりしている。でも、向こうではそれがない」



ちなみに向こうとは、恐らくヨーロッパのことを言っているのだろう。



「お互いに相手が恋人なのかはっきりしていない。もしかしたら恋人かもしれないし、もしかしたらただの友達かもしれない。そういうことか?」


「そういうこと」



岩船先生が簡潔にまとめてくれました。


人によるとセシルは言っていたが、そういうのが当たり前なんですね。


生まれてから一回も日本という国から出たことのない俺には、ちょっと想像のできない世界だ。



「んで、その相手といまはどうなってるんだ?」



と、岩船先生。



「さぁ? どっかで楽しく暮らしてるんじゃないかな」


「連絡とか、とったりしてないんですか?」



これは俺の発言。



「連絡先知らないもん」



まさかの・・・。



「セシルさん的には、その人のことどう思ってた?」


「当時は恋人かなぁ・・・なんて思ってたりもした」


「かなり進展してたんですね」


「うん。だけど、私がフランスに引っ越しすることになって。終わったよ」


「連絡先を交換していれば、多少は変わっていたかもしれませんね」


「まぁね。でも、もうあの人のことは何とも思ってないよ」


「あ、忘れたって感じ?」


「うーん・・・まぁ友達に戻ったって感じかな?」



友達以上恋人未満から、ただの友達に関係がダウングレードしたってことだろうか。


それにしても、独特な人間関係もあるもんだな。


あいや、日本が特殊なのかもしれないが・・・。



「私は新しい出会いを求めるのだ」


「頑張ってくださいね」



と、ここだけは小並感。



「頑張るよ! 相手が日本人なら、コクハクってやつをしてみたいね」



すごく意気込んでいるが、それならこんな人のいない天文部なんかよりも、運動部とかに所属した方が注目を浴びる説を提唱するよ。口には出さないけど。


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