第49話「中立のエスニック」


セシルは過去に、スイスというヨーロッパの中央に位置する中立国に住んでいたことがあるらしい。



「スイスって、国民皆兵があるって聞いたけど本当なん?」


「男はみんな兵士」


「ほう」


「みんなで国を守る。日本には軍ないの?」



自衛隊は軍ではないという建前。


まぁ海外では、自衛隊のことをJapanese armyって言わないと通じなかったりするが・・・。



「そもそもだけど、スイスって中立国だよね?」


「うん」


「中立国なのに、なんで軍があるん?」


「中立だからだよ」


「武力を使うの?」


「使わないの?」


「中立なんだよね?」


「中立だよ」


「中立なのに、軍をもって何をするん?」


「なにって?」


「中立って、戦争しないんじゃないの?」


「するときはする」


「んでも、自分たちから喧嘩ふっかけることはしないでしょ?」


「最近はそんな感じだよね」


「最近?」


「むかしは傭兵とかが多かったって聞くよ」



傭兵(ようへい)、雇われ兵士。自分の国とは関係のない戦争に参加したりする。


最近は護衛や警備目的もあるので、一概には言えない。


義勇軍もニュアンス的には近い感じ。



「それはもはや中立ではない気が・・・」


「傭兵に行ったら中立じゃないの?」


「いや・・・でも、それって本当に中立なのか?」


「中立だよ」


「んなら、なんで軍をもって戦うん?」


「中立を守るため」


「中立になるために戦うん?」


「そうだよ」


「中立って平和主義の建前かと思ってたわ」


「スイスは平和主義だよ」


「よく分からんわ」


「私もよく分からない」



途中からお互い察していたが、これが世間でいうところの、エスニックジョークってやつですかね。


ここまでノリがいい人は初めて見たよ。



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