第46話「引っ越しだらけのセシルさん」


週末を挟んで、次の週。


今日は天文部の活動日なので、授業が終わると部室へ向かう。



「やぁ」



ドアを開けると、そこにはセシルの姿があった。



「やっぱいるのか」


「いてほしくないみたいな言い方」


「いや、そう言う意味じゃない。すまなかった」


「スマナカッタ」



日本語の意味が分からなくてそう言ってるのか、それともふざけてそう言ってるのか。


この人はよく分からない。



「あれ、もういたのか。村上に・・・えっと」



そこへ登場したのが、我が部の顧問である岩船先生。



「セシルさんですね」


「そう、セシル」



顧問であり先生なんですから、2人しかいない部員の名前ぐらい覚えましょうよ。



「んで、セシルはどこから来たのか?」



岩船先生、それ前回の活動日に俺が聞いてます。



「フランス」


「ほう、なら、フランス語とか喋れるんだな。ボンジュール」


「フランス語、ちょっとしか喋れない」


「どうしてだ?」


「フランスから日本来た。でも、フランス暮らしたのちょっとだけ」



カタコトな日本語で、そう説明する。


心なしか、先週よりも日本語が上達しているようにも思える。



「なら、出身地はどこなんだ?」


「生まれたのは、イタリア。4年住んだ」


「ほう。4年とはまた短いな」


「うん。それからイギリスに4年住んだ」


「ネイティブの国も住んでるんだな」


「ドイツにも6年住んだ。スイスに2年住んだ。それからフランスに1年住んで、日本来た」



えっとつまり・・・。


イタリアで生まれて、イタリアでは4年間。


イギリスに4年間。ドイツに6年間。スイスに2年間。フランスに1年間住んで、日本に来たと。


すごい波乱万丈ですね・・・。


向こうではよくあることなのか?


国をまたいだ引っ越しというのがあまりない日本において、ちょっと想像できない面白いことだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る