第43話「知らない人と二人は気まずい」


季節は10月の下旬。


もうすっかり秋という感じで、夜なんかはかなり冷え込む季節。


そんな日々が続く今日この頃、俺はいつも通りに部室へ向かった。



「・・・?」


「こんにちは」


「・・・?」



そっとドアを閉めて、教室を再度確認する。


それでも天文の部室だったので、もう一回ドアを開ける。



「こんにちは」



カタコトにそう言う女の子は、やはりそこにいた。



「え、えっと」



この学校の制服を着ているので、生徒なのは間違いないだろう。


夜闇のような黒い髪は、ポニーテールになっている。膨らみの暗示さえない少女のような平たい胸に、決して高い身長でha

ないのに、錯覚で高く見えてしまうほどに良いスタイル。


さて、彼女は誰でしょうか。



「セシル・ド・モンクティエ」


「え?」


「セシル・ド・モンクティエ」


「はい・・・?」


「名前」


「あぁ・・・」



いきなり何を言ってるんだ? と思ったが、自分の名前を言っていたのか。



「俺は村上友彦って言います」



コクリと頷く。


察するに、あまり日本語が喋れないのだろう。


そして、名前から察するに・・・。



「欧米の人・・・かな?」


「はい」


「そっか」


「留学しに来た」


「なるほど」


「先生、どこ?」


「あぁ・・・そのうち来ると思うけど」



そう言えば、いつもはいるはずの岩船先生が、こういう日に限っていない。


一応今日は、部活の活動日なのだが・・・。


というか、タスケテ・・・。知らない人と二人は気まずい。


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