第42話「人を褒めるって良いことだと思う」


ある日、部室で暇そうにしている岩船先生に、こんな話題を振ってみました。



「先生って、彼氏さんとかいるんですか?」



それを聞いた先生は、飲んでいたコーヒーを吹き出してしまいました。


そんなに驚くことですかね。



「村上からそんな質問をされるとはな・・・」


「いや、ちょっと気になっただけです」


「そういう話は苦手なんだよな」


「そうなんですか?」


「そもそもだが、私の性格を気に入る男なんているのか?」


「いると思いますけど」


「そうか? 教師で休日はゲーム三昧のわたしだぞ?」



自己評価が大変厳しいようで。


俺も学校以外ではゲームばかりしているので、似たようなものだ。



「先生にだって、良いところはありますよ」


「ないだろ。何かあるのか?」


「そうですね・・・優しくて面倒見がいいところとか」


「優しい? 面倒見がいい? どこが? What!?」



言われても心当たりないんですかね。


自己評価低すぎやしませんか?



「俺的には、岩船先生は結構頼れる人ですよ。先生としてじゃなくて、人として」


「きみも相当な変わり者だな」


「なんでそうなるんですか。岩船先生は、何だかんだ他人に気を配れる人だと思います」


「そうか? 気を配ってるつもりは一切ないのだが」


「なら、自然にできているってことですよ」


「そういうものなのかな・・・」



首をかしげる先生だったが、表情はどこか嬉しそうに見えた。


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