第38話「神社の帰路」


木々に隠れるように、ひっそりと佇む村山神社。


お参りをして、そして帰路につく。


お互いが横並びに歩きながら、話しかける。



「良いところでしたね」


「そうか?」


「はい。また来たいです」


「・・・」



途端に黙り込んでしまう先生。


ただ単に、返す言葉がなかったわけではなさそう。


一瞥した彼女の表情は険しく・・・いや、どちらかと言えば、複雑な心境をしている。そんな表情。



「どうかされました?」



問うと。



「いや・・・何でもない」


「そうですか」


「ところで村上。最近、何か悩みはあるか?」


「悩みですか?」


「あぁ。何でもいいぞ。私が力になってやる」


「そうですね・・・特に、これと言っては」


「ないのか?」


「はい」


「そうか。まぁないに越したことはないよな」


「そうですね・・・でも、どうしてそんなことを」


「いや・・・ちょっと気がかりなことがね」


「気がかり?」



そんな俺の言葉とほぼ同時ぐらいに、岩船先生の足は止まる。その場で立ち止まる。


目線を下に下ろすと、先生のぶら下がった手は、少し震えていた。



「どうしたんですか?」


「いや・・・何でもない」


「何でもなくはないと思うんですが・・・悩みがあるのは、先生の方なのでは?」


「すまないね。そう見えるかい?」


「今の挙動とか見れば、そう思えてきます」


「そうか・・・生徒に心配かけるとは、まだまだだなぁ、わたしも」



そう言うと、両手で自身の頬を叩いて、また歩き出す。


気持ちを入れ替えたように、それからの先生はとても元気そうだった。


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