第35話「暗闇で二人きり」
日が沈み、夜になると、家からほど近い川辺に案内された。
どうやら、ここでバーベキューをするらしい。
「友くんいっぱい食べなね」
そう言うのは、岩船先生の従兄弟である友奈さん。
友くんは相変わらず慣れない。
そんな友奈さんは、片手に缶ビールを持っている。
「酔うなよ? 友奈」
「佳奈美ちゃんは飲まないの?」
「生徒の前では飲めん」
それを生徒である俺の目の前で言われると、申し訳なくなってくる。
「俺のことは気にしないでください」
「いいや、私は飲まない」
気にする必要はないと言うが、岩船先生は頑なに拒否する。
そこに、少し出来上がってきている友奈さんが、先生の頬をつつきながら言う。
「佳奈美ちゃん悪酔いするもんねぇ~?」
「そんなことはない」
「嘘つけぇ。去年なんか可愛かったよ~?」
その去年が少し気になったが、まぁ訊かないでおこう。
それからバーベキューを一通り楽しんだところで、岩船先生から肩を軽く叩かれる。
「なんですか?」
「ちょっとだけ、夜風に当たらないか?」
「夜風? もう当たってませんか?」
「あのなぁ・・・」
どういうわけか、呆れられました。
「ついてこい」
そう言われたので、とりあえずついて行くことに。
友奈さんは酔いつぶれて寝ているし、中寿ほどのおばあさんこと春子さんは、バーベキューの後片付けをしてくれている。
そんな中、川沿いを暗闇の方へ向かって歩いていく。
「どこに行くんですか?」
「そうだな・・・もう少し先だ。転ぶなよ?」
いわゆる河川敷・・・と言えばいいのだろうか。もちろん未整備の。
ここは石ころなんかが転がっている場所。
足場は悪い。それに、光源はほぼない。
岩船先生が懐中電灯を持っているが、それも前方向をほんの少し照らす程度だ。
「気をつけまs・・・おっと」
「大丈夫か?」
「はい・・・転びかけただけです」
「ケガするなよ。ほら」
そう言い、差し出されたのは先生の手。
はい? と、そう思ったが、普通に繋げってことですかね。
先生からしたら何とも思わないのかもしれないが、男子高校生の俺からしたら、異性の人と手を繋ぐってだけでどこか抵抗感がある。
その抵抗感とは、嫌という意味の抵抗感ではない。
うまく言葉にすることはできないが、少し胸の鼓動が上がるといった意味の抵抗感だ。
「すみません」
そう言い、彼女の少し冷たい手を握った。
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