第34話「いとこ」


古い木造の民家に到着した。


広い庭のような空間。二階建ての広々とした家。


いかにも田舎のおばあちゃんの家って感じだが・・・。



「あの、ここって」


「あぁ。私の祖母の家だ」


「祖母の家・・・なんですか」



いくつか疑問がある。


ここが岩船先生の祖母の家ということはわかった。


岩船先生がここに来ることも理解できる。


では、なぜ俺がこの場にいる?



「旅行って聞いたから、どっか観光地にでも行くのかと思ってました」


「村上にとっては、旅行みたいなもんだろ?」


「ま、まぁそうですね」



岩船先生に案内され、民家に入る。


そのまま廊下を歩き、階段を上がり、二階の奥側にある角部屋へ案内される。


そこは、和風な民家という外装からしたら、少し意外なフローリングの部屋。


とはいえダークオークのような板材で、暗さと上品さがある部屋だ。


広さは見た感じで6畳前後だろうか。


ベッドがあり、ゆか座式のテーブルがある。



「しばらくはここが村上の部屋になる」


「はい。わかりました」


「ちなみに私もここだから」


「はい・・・はい?」


「申し訳ないが、客間はそんなに多くない。文句があるならおばあさんに言ってくれ」


「いやいや、こっちはご厄介になる身ですから。文句なんてありませんよ」



窓から外の景色を眺めると、そこはのどかな田舎の風景。そうとしか言いようがない風景だ。


天文部の活動と言われれば、確かに星は良く見えそうだ。


そういうことなのだろうか。



「佳奈美ちゃん・・・いる?」



部屋でボーっとそんな思考を巡らせていると、ドア越しから聞こえる女性の声。


その声にこたえるように、岩船先生が立ち上がる。



「あぁ・・・いるぞ」



そして、ドアを開ける。



「久しぶり」


「久しぶりだな」



ドア越しに聞こえた女性の声の主。岩船先生より一回り身長が小さく、それでも俺よりかは高い。


ポニーテールとシュシュをして、ベージュ色のTシャツと白パンツを身にまとっている。



「あれ、その子って」



こちらに気づくと、そう言いながら近寄ってくる。



「ど、どうも・・・」


「あら~、佳奈美ちゃんが男連れ込んでるよ~、あはは」


「生徒だ」


「へぇ~?」


「相変わらず面倒な奴だな。村上、この女は飯田友奈(いいだゆうな)。私の従兄弟だ」


「従兄弟さん・・・なんですね」


「よろしくね。えっと君は・・・」


「村上友彦です」


「うん。友くんね」


「トモクン?」



何と言うか、陽気でテンションが高い人だ。


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